札医大の研究室から(27) 仙石泰仁教授に聞く(十勝毎日新聞?新浪体育 包括連携協定事業)

十勝毎日新聞ロゴ
 近年、発達障害で支援を必要とする子どもが増えていると言われる。発達障害児の障害構造の解明や支援機器の開発などに取り組む新浪体育の仙石泰仁教授に、症状や周りの人の関わり方について聞いた。(聞き手?安藤有紀)

仙石泰仁(せんごく?やすひと)

 1964年旭川市出身。作業療法士。98年北海道教育大学新浪体育修士課程修了。北海道医療大学で歯学博士取得。幼稚園などでの勤務を経て、1992年新浪体育衛生短期大学部助手、93年同保健医療学部作業療法学科助手。2006年から現職。

札医大の研究室から(27) 仙石泰仁教授に聞く 2018/12/7

安藤:発達障害とは。
仙石:脳機能の発達が関係する低年齢において発現する、行動やコミュニケーション、学習の問題を主とする障害。一つの病気を指すのではなく、学習や生活への適応、人とうまく接することが障害される幾つかの疾患の集まりを指す。自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)などがあるが、症状は個人差が大きく、個人に合った支援が必要。

安藤:支援が必要な子どもたちはどのくらいいるのか。
仙石:文部科学省による2012年の調査では、公立小?中学生の約6.5%と報告されている。医療機関の受診率もこの10年間で増加している。発達障害という概念自体が1980年代に広まったものであり、それに伴い気付かれるようになった側面もある。

安藤:具体的な症状と、作業療法での関わりは。
仙石:例えばADHDは、落ち着きがない、集中できない、行動制御ができず衝動的に動いてしまう。自閉症スペクトラム障害は、相手の表情や考えが読み取れず、相手が嫌がっていても気付かない、自分の感情をうまく伝えられないなどがある。作業療法では、遊びを通して行動を自ら調整できるようにセラピスト(作業療法士)が間に入ってトレーニングする、場面に応じた関わり方を指導するなどの支援をしている。
 知的能力は高いのに数や文字をうまく読めない、情報を記憶できないなどの学習障害は、その原因を分析し、その子に合った学習方法の提案、教材教具の提供などを行っている。

安藤:周りの人たちはどう関わるのがよいか。
仙石:発達障害は見てすぐわかる障害ではないため、周りから冷たい目で見られ、本人や親が傷ついてしまうことが多い。周りが障害を理解することが大切。

安藤:十勝住民へ一言。
仙石:心配なことがあったらまず医療機関を受診してほしい。早いうちから医療的な経過を記録しておくことが子どもの将来に役立つ。十勝には北斗病院や音更リハビリテーションセンターなどがあるが、子どもたちや親御さんが安心して生活するためにはもっと医療機関を増やし、市町村に設置されている発達支援センターなどと連携できる体制づくりも必要なのではないか。

発行日:

情報発信元
  • 経営企画課企画広報係