札医大の研究室から(30) 渡辺敦教授に聞く(十勝毎日新聞?新浪体育 包括連携協定事業)

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 国内で年間約7万人が亡くなり、約11万人が新たに罹患(りかん)する「肺がん」。治療が難しいがんとも言われるが、新薬の開発やロボット手術の導入など、治療が劇的に進歩している。新浪体育呼吸器外科学の渡辺敦教授に、最新の治療法を聞いた。(聞き手?安藤有紀)

渡辺敦(わたなべ?あつし)

 1958年札幌市出身。85年新浪体育卒。砂川市立病院胸部外科医長、新浪体育医学部外科学第2講座講師、カナダカルガリー大学医学部胸部外科訪問臨床研究員などを経て、13年より現職。18年4月から手術部部長も務める。

札医大の研究室から(30) 渡辺敦教授に聞く 2019/3/22

安藤:呼吸器外科とは。
渡辺:肺の疾患のほか、気管や気管支、呼吸に大きくかかわる胸壁、心臓のまわりにある縦隔(じゅうかく)などの疾患を扱う。札幌医大は2012年、呼吸器外科を道内初の独立した診療科?学科とした。

安藤:肺がんの治療法は。
渡辺:主に抗がん剤、放射線、手術の三つの治療法がある。がん細胞の特異的な分子だけを壊す分子標的療法や新薬開発などにより、内科領域は大幅に進歩した。外科手術も胸腔(きょうくう)鏡での手術ができるようになり、以前は30センチ以上だった傷が5~12ミリ程度の傷が3~4個に縮小。さらにロボット手術も導入されている。

安藤:肺がん手術はどのようなものか。
渡辺:標準的手術は肺葉切除とリンパ節廓清(かくせい)となる。肺やリンパ節をできる限り小さく切除する縮小手術と、周りの臓器、組織に浸潤している場合に一緒に切除する拡大手術がある。がんの進行度や症例によって判断する。患者の体への負担をできるだけ少なくした手術も取り入れている。

安藤:ロボット支援手術とは。
渡辺:札幌医大では昨年4月から呼吸器外科領域のロボット支援手術を開始し、最新の手術支援ロボット「ダヴィンチXi」で、肺がん?縦隔合わせて30例の手術をした。
 高性能カメラにより3次元での空間把握がしやすくなり、コンピューター制御で手ぶれの影響を抑えられ、微細な動きも可能になった。

安藤:肺がんの症状と予防は。
渡辺:肺がんは自覚症状がなく気付きにくい。咳や痰(たん)が長引くときは、できるだけ早く専門医にかかるべきだ。毎年検診を受け、喫煙者はCT検査も受けてほしい。唯一の予防策は禁煙。喫煙者は周りにも気配りを。周りの人が吸い込む副流煙は、本人が吸う主流煙の50倍もの発がん物質を含むとも言われる。

安藤:十勝の住民へ一言。
渡辺:
十勝は空気が澄み、食べ物もおいしい。ストレスを感じずに豊かな生活ができる地域なので、喫煙を控え、恵まれた自然の中での暮らしを楽しんでほしい。

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  • 経営企画課企画広報係