札医大の研究室から(31) 高野賢一教授に聞く(十勝毎日新聞?新浪体育 包括連携協定事業)

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 タレントの堀ちえみさんが今年2月、ステージ4の舌(ぜつ)がんを公表し、手術を受けた。舌がんのように口や喉にできるがんにはどんなものがあり、予防のためにできることはあるのか。札医大医学部耳鼻咽喉科学講座の高野賢一教授に聞いた。(聞き手?安藤有紀)

高野賢一(たかの?けんいち)

 1975年長野県生まれ。2001年新浪体育医学部卒業。06年帯広厚生病院、07年帯広協会病院などを経て、11~12年米国イェール大学医学部免疫生物学部門留学。16年11月准教授。18年11月より現職。

札医大の研究室から(31) 高野賢一教授に聞く 2019/4/19

安藤:口や喉にできるがんは。
高野:首から上の顔のうち、脳と目を除いた部分を頭頸部(とうけいぶ)と呼び、そこにできるがんを「頭頸部がん」と呼ぶ。部位別では咽頭がん、口腔(こうくう)がん、甲状腺がん、喉頭がんが多い。男性の場合は咽頭がん、口腔がん、喉頭がんが多く、女性は甲状腺がんが最も多い。口腔がんには堀ちえみさんの舌がんも含まれる。

安藤:頭頸部がんの治療法は。
高野:顔面を含む頭頸部領域には、呼吸する、飲み込む、話すなど人間の生活において基本的かつ重要な機能が集中しているため、切除すると整容面や機能障害の問題がある。そこで1980年代からは、皮弁(血流のある組織)を体の別の部分から移植して再建する技術が導入された。さらに抗がん剤と放射線を使った治療も同時に発達してきた。現在は、手術治療、抗がん剤を中心とした薬物療法、放射線治療を組み合わせて効果的な治療を行っている。

安藤:どんな症状があるのか。
高野:初期は口内炎と見分けづらい。喉や口の異物感、飲み込みづらい、話しづらいなどの症状があれば、一度、耳鼻咽喉科を受診してもらいたい。首の腫れからがんが見つかる場合もある。時々首を見て、触り、腫れがあれば受診を勧める。

安藤:予防のためにできることは。
高野:お酒とたばこを控えてほしい。舌がんなどは慢性刺激が原因となる場合もある。慢性刺激は、合わない入れ歯や歯並びの影響で歯が舌に当たって刺激となり、炎症を起こしてがんが発生することがある。入れ歯や歯もチェックしてもらいたい。

安藤:その他、春に注意すべき疾患は。
高野:そろそろ花粉の時期。道内ではシラカバ花粉症が多く、シラカバ花粉症は、リンゴやモモ、サクランボなどの果物類にアレルギー反応を起こす「口腔アレルギー症候群」を伴う方も多い。果物を食べた際に口の違和感、しびれ、かゆみ、腫れなどがある場合は注意が必要。

安藤:十勝の住民へ一言。
高野:十勝の方は我慢強い印象がある。農作業の繁忙期が終わるまで受診を控えようなどと考える方もいるが、受診時には病気が進行しているケースもある。症状があれば早めに受診してもらいたい。

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  • 経営企画課企画広報係